早くも(札幌家裁要請文の)草案を頂きました。

16日に公募した札幌家庭裁判所への要請文ですが、早速、草稿の応募がありました。北海道のKUさん、ありがとう。以下は、KUさんの草稿です。差し障りの無いようにして、全文を公開します。

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札幌家庭裁判所長 近藤壽邦 様

 私たちは離婚後の非養育親と子の面会交流を求めているものです。

 今年5月に、民法が一部改正され「面会交流の円滑な実現および継続的な養育費支払い等の履行を確保するための制度の検討、履行状況に関する統計等、必要な措置を講ずること」との付帯決議が採択されました。
 またこれを審議した国会において、最高裁判所長官代理者 である 豊澤佳弘・最高裁判所家庭局長が、井上哲士議員 からの質問に対して次のように答弁しています。
最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君)今回の法改正につきましては、これまでも法制審議会での議論であるとか、審議の状況であるとか、改正法案の趣旨、またその内容につきまして、随時各裁判所に対して周知を行ってきたところでございます。また、常日ごろより、家庭裁判所の裁判官や関係の職員につきましては、面会交流その他の家事事件の適正な処理に必要な知見を得るために研修や研究会等を実施するなどしているところでございます。このような機会をも使いまして、今後更に法改正の趣旨を踏まえた適切な事件処理が図られるよう、必要な情報の周知に努めてまいりたいというふうに考えております」

 しかし現実的には残念ながら、子どもの権利条約批准国である日本においては、離婚後の非養育親と子の面会交流は今まで軽視されてきました。
 離婚後も両親との継続的な交流を持つことが子にとって有益であることは、種々の調査・研究により明らかな事実であり、欧米では可能な限り非養育親と子どもが過ごす時間が、養育親と過ごす時間と50:50になるよう努力がされています。
 多くの国においては面会交流の阻害は、子どもの権利の蹂躙・児童虐待であると認識されており、犯罪としている国もあります。
 「イクメン」と言う言葉が普及したように、現代の日本においても、「子育ては両親が協力して行うもの」という認識が定着しております。平成10年度の厚生白書においても、「母親の育児不安を解消するには、父親はもちろんのことできる限り多くの人が子育てに係わる中で、母親自身も過度の子どもとの密着関係を見直すことが必要である」とされています。
 一方で日本の家庭裁判所においては、千葉家裁における「非養育親は、2か月に1回・3時間会えば良い」・さいたま家裁における「非養育親は、半年に一回程度子どもの写真を見れば良い」等という非常識な判断がここ数年でもされており、科学的知見・現在の社会の実情どちらからも乖離していると言わざるを得ませんが、いかがでしょうか?

 離婚しても生物学的に親であるという事実には変化はなく、養育親の一方的な感情で、それまでに築かれまた将来構築されるであろう非養育親と子の関係を妨げることは、子どもの権利の侵害であり、明らかな児童虐待と言えます。

 視点を変えれば、今までの司法の現場においては、養育費の不払いに対しては強制力を発しながら、面会交流に対しては何らかの処置がとられることは少なく、先に述べたようなむしろ阻害する判断が少なからず下されてきました。
 現実的には、離婚に至る過程で引き離しを推奨する弁護士やそれを黙認する裁判官が存在し、離婚成立後には面会交流を妨げたり、洗脳虐待を黙認する裁判官・調査官などがいます。
 離婚時に交わした文書では、養育費と面会交流の両方が述べられているのに、現実の裁判所では面会が行われなくても養育費の支払いのみを求めるという、「クリーンハンドの原則」は無視した法律運用が常々行われています。
 これでは非養育親からすれば、養育費という義務ばかりを求められ、「子どもと面会・交流するという権利」はないがしろにされていると言わざるを得ません。また、非養育親にも子育てに関与する「義務」が存在するはずです。
 これは「両性の平等」や「幸福追求権」・「生存権」といった、憲法に基づく基本的人権にも関わる問題ではないでしょうか?
 また、一部の義務のみの履行を迫っておきながら、同時に存在するはずの権利や義務を無視するという矛盾に関しては、どうお考えでしょうか?

 単独親権を採用する日本においては、離婚に際し殆どの場合は母親が親権者となります。
 昨今良く新聞を賑わす痛ましい「児童虐待」においては、その多くは実の母親が関与しており、ただ「母親に子育てを任せお金(養育費)さえ渡しておけば子どもは健全に育つ」という考えは、もはや危険な過去の遺物と言えます。
 子どもは将来の日本を支える社会全体の財産であり、多くの人に見守られて育つべきです。ならば手始めに子育てに関与したいと考えている父親(非養育親)に裁判所としても、もっと積極的に答えるべきではないでしょうか?

 今までないがしろにされてきた「非養育親と子どもとの面会交流」を、民法改正を鑑み家庭裁判所長として、今後どのように扱われるのかお考えをお聞かせいただければ幸いです。

2011.9