FPIC訪問(05年12月2日)報告

12月2日午後4時にFMAさんとともに、東京都豊島区東池袋の社団法人・家庭問題情報センター(FPIC)東京本部を訪ねました。永田秋夫同事務局長から、いろいろなお話を伺ってきました。参考になる内容も多いと思います。以下は永田事務局長とのやり取りを一問一答形式にまとめたものです。<2005年12月2日 FPIC東京・東京都豊島区東池袋サンシャインシティ60 永田秋夫事務局長>
――昨年(2004年)から今年(05年)にかけて、FPICでは具体的にどのような動きがあったのでしょうか。
「この世界では『子どもの福祉』ということが金科玉条のようにいわれます。ですが『子どもの福祉』とは実際にはどういうことなのでしょうか。子どもは親の離婚で混乱しています。しかし、そうした中でも、その混乱から立ち直った子どももいます。それはどういう理由なのでしょうか。FPICでは『面会交流を上手に行うにはどうするか』『子どもは“親の離婚”をどうみていたのか』をテーマに独立行政法人福祉医療機構の助成を受けて、昨年(04年)6月から(同年)10月まで調査研究を行いました」
アメリカには離婚後の父母と子どものかかわり方などを追跡した『ワレンシュタインの調査』などがあります。日本にはこうした研究がないので、今回の調査研究では『日本版ワレンシュタイン調査』を目指しました。朝日新聞に調査への協力を求める記事を掲載し、『離婚した親』『親が離婚した子ども』にそれぞれ調査への協力を呼びかけました。報告書は今年(05年)3月にまとまり、9月には加筆修正して増刷しました」
――具体的にはどういう内容の調査だったのでしょうか。
離婚した親に協力を求めたケースが約100事例。親が離婚した子どもに協力を求めたケースも約100事例。いずれも、そのうち50くらいのケースは面談(聞き取り)調査になりました。年齢層は、離婚した親の場合は30代から40代が中心層になり、親が離婚した子どもの場合はそれよりも若い年齢になりました。離婚した親の場合だと60歳代の方でも協力してくれた人もいます。親が離婚した子どもの場合は10代からの協力者もいました」
「面談調査の内容は、子どもに離婚を説明している場合と、離婚を説明していない場合に分け、いずれの場合でも面会交流を行ったか、行っていないかを尋ねました。親が離婚した子どもの場合では、親が離婚した後、子どもはどうなったかを意識して、生活水準やいじめの問題を尋ねました」
――その結果、どういうことが分かったのでしょうか。
子どもを立ち直らせるには、両方の親から愛されていることを自覚させる必要があるということです。親が離婚紛争中だと、とかく子どもにまで目が行きにくいものです。ですが、子どもに目が行った場合だと、子どもが立ち直りやすいことが分かりました。余談ですが、一度でいいからお父さん(非養育親)と会わせてほしかったと言う子どももいました」
――調査結果は冊子にまとめられたのですよね。
「はい。9月に加筆修正して、800円で頒布中です」
――早速、購入させてください。そのほかには? 例えばDVなどの場合は?
「DVや借金の取り立てなどで子どもが傷ついている場合は、『親教育』が必要になるかもしれません。例えばアメリカでは、ケースワーカーが30分くらいガイダンスを行う形で『親教育』というものを導入しています。DVや借金の取り立てなどで子どもの心が傷ついている場合は、面会交流の仕方も難しいので『親教育』を済ますことからステップアップを図るという考えに基づいています。日本の場合は協議離婚が多いので、ガイダンスを組織的には受けにくい環境があるのかもしれません」
――そうなりますと?
「FPICとしては『親教育』のセミナーみたいなものが必要かな、と考えています。例えば、親の方でも子どもの心情がよく理解できていないみたいなことがあります。一例ですけど、子どもが中学生の場合と、小学3−4年の場合とでは面会交流の仕方がそもそも違うわけです。ですが、面会交流がうまくいかないといって落ち込んでしまう父親(非養育親)もいます。親子の分離・距離のとり方を学ばせる必要があるのかもしれません。密着が強すぎると不登校の原因になることもあります。ですが、そうした密着を乗り越えて回復している子どももいます。親子の分離・距離のとり方は『親教育』の項目になるかもしれません」
――なるほど。
「総じて言えることは、子どもも親を見ているということです。父親の行動傾向、母親の行動傾向をそれなりに子どもも知っています。『親だから』という絶対性は通用しません」
「養育親(主に母親)の面会交流に対する覚悟が決まっていないと、子どもは面会交流を喜びません。子どもが「(非養育親=主に父親と)会いたくない」と言う動機をつくることにもなります。そうなると、養育親側は「子どもが会いたくないと言っている」と言うようになるし、非養育親の側では「洗脳だ」と反発することになります。不毛な対立が続くことにもなるわけです」
「さらに最近の子どもは心情がつかみにくいところもあるように感じます。私(永田さん)の雑感ですが、最近の子どもは心理的自立や社会性の獲得が遅れているように感じます」
――その他に何か、印象みたいなものはありますか。
「親世代の聞き取り調査から感じたことなのですが、離婚したことを、今日でも『隠したい』という人が多いのは少々驚きましたね」
――なるほど。FPICの動きとしてはどうでしょうか。名古屋にもFPICが誕生したと聞いていますが?
「はい。FPICの名古屋事務所は今年(2005年)10月17日にオープンしました。FPICはこれで栃木、千葉、東京、名古屋、大阪、福岡に事務所を持つようになりました」
――その他にFPICの新たな動きは?
「無料電話相談のテーマに変更が生じてきたことでしょうか。そもそもはDVをテーマに始まった無料電話相談ですが、最近は『子育て支援』などのテーマに変更することが増えました。重心に変化が生じているのかもしれませんね」
――共同親権について何か。
共同親権といってもまだ内容がぼんやりしていますからね、FPICとしては特にありません。この前、野田愛子さん(弁護士、元札幌高裁長官)と会った時に『日本でも共同親権を考えないといけないね』とおっしゃってましたよ。離婚後の当事者の立ち直りを支援しなければならない、という意味なのかもしれません。そういう離婚後の親の立ち直りという意味なら、FPICとしても具体的に考えていきたいと思います」
――ありがとうございました。