DCI日本支部訪問(05年12月2日)報告

12月2日午後8時にはFMAさんとともに、東京都豊島区南池袋のNGO組織・DCI日本支部を訪ねました。福田雅章代表にDCI日本支部の活動内容や今後の方針、子どもの権利条約第9条を取り巻く環境、子どもの意見表明権などについて尋ねました。興味深いお話が聞けたと思います。<2005年12月2日 DCI日本支部・東京都豊島区南池袋3−11−22メイハウス 福田雅章代表>
――今日は「子どもの権利条約第9条」とDCI日本支部の活動について、特にお話を伺いたいと思います。
「DCI(日本支部)の会員の中には、お子さんの親権や面接交渉権の関係で、地裁、高裁で闘っているKさんがいらっしゃいます。KさんはDCIの活動に積極的に加わって下さっています。その他にも、お子さんを(相手方に)奪われてしまった千葉県の女性、野口さんとおっしゃったかな、そういう方もいます。かしわ。さんは美由さん(ファーザーズ・ウエッブ・サイト創設者の一人)と関係のある方ですか」
――いえいえ、違います。むしろ美由さんとはライバルだった仲でして。ですが、ファーザーズ・ウエッブ・サイトと面接交流ネットでは、組織の性格や目的は似ているかもしれません。
「そうですか。直接お会いしたことはないのですが、2002年の12月ころだったかな、電話とFAXで美由さんから、基礎報告の草稿をもらったことがあります。ファーザーズ・ウエッブ・サイトも第2回(国連NGO報告書)つくる会の基礎報告に加わっています」
――なるほど。そうでしたか。DCI日本支部の活動実績についてお話ください。
04年1月の(国連)本審査までに、第2回国連子どもの権利条約NGO報告書を提出しました
――この『NGO報告書』とは、どういうものなのですか。
「国連の子どもの権利条約に基づいて、批准国は国連に『わが国の子どもはこんな環境で過ごしています。わが国の子どもを取り巻く環境はこういう状態です』といった報告書を出します。ですが、政府報告書だといわば官製の報告書ですから、綺麗事しか書きません。そのため、実態を正確に記述した民間の、NGOの、報告書が必要になります。DCI日本支部では、実行委員会形式の『第2回(国連NGO報告書を)つくる会』を02年から立ち上げ、先ほども申しあげたようにNGO報告書を国連子どもの権利委員会に提出しました」
「最近では国連でも、NGO報告書を重視しています。そのときの(国連の)予備審査では、18人の審査委員が政府報告書よりも、NGO報告書に記載されている内容を中心に審査を進め、国連報告書がまとめられ、日本に勧告が出されました
――分量もかなりのものですね。
「第2回つくる会でまとめたNGO報告書は、249本の基礎報告書を土台にまとめ上げたものです。子どもの権利条約自体が内容的に多肢にわたるため、部門ごとに13のグループに分け、起草委員も30〜40人に上る大掛かりなものになりました。起草委員は全国から募集しました。この基礎報告書を国連の書式ルールにのっとって、国連に提出する報告書としてまとめ、統一報告書にしたものが『第2回(国連NGO報告書を)つくる会』のNGO報告書です。国連子どもの権利委員会にインパクトを与えたと思います。さらにあの時は、もう一つの手法で、同委員会にインパクトを与えました」
――『もう一つのインパクト』とはどういうことでしょう。
8人の子どもたちが直接、国連(の子どもの権利委員会)に行って国連委員に意見陳述を行ったことです。この意見陳述のタイミングが実に難しくて、いつになるかは審査の進み具合による、といった感じなんですが、『第2回』の場合は、04年1月27日に行われました。1月28日に本審査が行われましたから、本審査の前日に子どもたちの意見陳述がなされたということになります。『第2回(国連NGO報告書を)つくる会』をベースに編成した『(子どもの声を国連に)とどける会』が子どもたちをニューヨークに招へいする形をとりました。8人の子どもたちの意見が全部、国連報告書と日本に出された勧告の中に反映されています」
――なるほど。すごいですね。DCIは単なる国連NGOというのではなく、かなり独自色を持っているように感じますが。
子どもの権利条約関係で、国連にモノを言える日本の団体は、大きく分けて3つあります。一つは反差別運動の流れを酌む団体でARC。もう一つは日弁連。そしてDCI日本支部です。DCI日本支部国債児童年の1979年に発足し、アムネスティ・インターナショナルなどが人材や拠出金を提供して成長してきました。今年(05年)の10月に国連子どもの権利委員会委員長らを日本に招いたのは、国連ともちょっと違う、DCI日本支部の独自色を、デゥック委員長(子どもの権利委員会委員長)に学んでもらうという『隠れた狙い』もありました」
――これから「第3回(NGO報告書を)つくる会」を立ち上げるんでしたね。
「ええ、『第3回(NGO報告書を)つくる会』はまだ立ち上げていません。(05年)12月16日に『第3回つくる会』立ち上げの呼びかけ人会議を、来年(06年)1月21日には『第3回(NGO報告書を)つくる会』発足総会をいずれも(東京都千代田区御茶ノ水明治大学で行います。『第3回(NGO報告書を)つくる会』も『第2回つくる会』と同様に実行委員会方式を考えています。政府報告書の提出期日などから見て06年4月、できれば3月いっぱいまでに間に合うように、NGO報告の基礎報告書を作らないといけません。『第3回(NGO報告書を)つくる会』は1000人の会員を目標にしています」
――だいたいの活動スケジュールなども決まっているのでは?
「はい。06年5月までに政府報告書が国連に提出されると見ています。政府報告書の提出を受けてから、約1年後に国連の審査が始まります。ですから、07年4月辺りから予備審査が始まるのではないでしょうか。この予備審査は国連の専門委員が行うのではなく、もっぱらNGOのメンバーが任に当たります。ですが、NGOメンバーの一挙手一動は専門委員に強いインパクトを与えます。国連の専門委員が行う本審査は、予備審査を終えてから行われます。だいたい予備審査は半年からそれ以上かかるので、今回の本審査は07年9月から08年1月までには行われると読んでいます。……ですので、このタイムテーブルを逆算していくと、来年(06年)4月、できれば3月いっぱいまでに、NGO報告の基礎報告書を作らないといけません
――なるほど。ところで、子どもの意見表明権とはどういうものでしょう。
「人間関係をつくっていける能力のことを言います。子どもをいかにして(行動)主体にしていくか、その導きをしてあげるのが意見表明権です。もっと平べったく言うと、子どもが『ねえ、ねえ』と問い尋ねたり、言ってくること、それに対して大人が応えてあげること。それが意見表明権であり、意見表明権の尊重ということです。DCI日本支部では0歳児からの意見表明権を認めるよう国連に求め、国連『子どもの権利委員会』作業部会で満場一致で(0歳児からの意見表明権が)確認されました」
――裁判所などが言う子どもの意見表明権は、10歳前後から、となっていますが?
「それは自己決定権というものでしょう。14歳の子どもまでは、大人と同じ権利を認めようというのが自己決定権というものです。日弁連などがそういうことを言っています。ですが、子どもは大人ではありません。何度も何度も失敗もします。民法で遺言が15歳からできるといっても、20歳までは親の決定が要りますよ。子どもの意見表明権は、自己決定権とは違います」
――自己決定権と意見表明権とでは中身が異なるということですね。
「ええ、そうです。子ども期というのは成長期のプロセスなのですが、現在は親のエゴや文部科学省(国策教育)のエゴなどで、そのプロセスが壊されています。本来は人格が形成される時期に『自己』を殺す人間を再生産させるような教育や環境に子どもは置かれています。結局は『自我』が殺されていくことになります。子どもの意見表明権(の保障)というのは、そうした流れを断ち切るために必要なのです。子どもの本当の意味での成長には、アイデンティティの獲得と道徳性が必要です。子どもの内面からの成長が促されるようにするためにも、子どもの意見表明権(の保障)が重要なのです」
――『子どもの権利条約』第9条に関連して、一言お願いします。
夫婦と子どもの問題は別だと思います。親権問題一つをとっても、子ども(の居所や養育の問題など)は裁判所の決めた通りに従っていいのか、疑問に感じます
――ありがとうございました。