最高裁に要請書を提出。

面接交流ネットとコトオヤネットさっぽろは、香川県高松市に本部を置く一般社団法人「親子の絆ガーディアン」と連名で要請書をまとめ、最高裁判所事務総局に提出しました。要請書の文面はやや硬く読みにくいものとなりましたが、裁判官が普段、審判書きや判決文で用いているような文体で、ある意味、裁判官の思考回路を皮肉っているとも言えます。「親子の絆ガーディアン」の方から、最高裁に提出していただきました。要請書の全文は次の通りです。


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要請書
最高裁判所 御中

 私たち、子どもとの別居を余儀なくされている親の団体は、以下の事項を、司法権の統括者たる地位にある最高裁判所に要請します。


 要請事項
 一、日本国憲法第七十六条三項には、裁判官自主独立の規定があり、その独立原則は最高裁判所といえども不可侵であることは承知している。しかし、下級裁判所裁判官への研修、勉強会の開催、情報提供などはなんら憲法に違反するものではない。以上に鑑み、先進諸外国の親子法とその運用状況・判断基準等につき最高裁判所主導で下級裁判所裁判官への研修、勉強会の開催、情報提供を実施して戴くことを要請致します。


 二、前記研修、勉強会、情報提供に際しては、法学上の視点のみに偏することなく、特に社会学的視点、発達心理学的視点、その他隣接諸科学的視点からの啓発に留意して、「子の福祉」とは何であるかが再考されるべきである。よって、前記研修、勉強会、情報提供に際しては、相当なる外部講師を招聘することを要請致します。


 理由
 一、我が国の家事調停、審判においては、法的監護権を持たぬ親を親として正当に扱わず、紛争解決の手段として法的立場の弱い親を一方的に押さえつける運用で解決が図られることが多数である。このことは我々の集積した事例のみならず、家事調停・審判の経験当事者から多くの声が上がっている。又、現在我が国は諸外国から、国際的な子の奪取に関する民事面のハーグ条約の批准を迫られているが、このような事態に至った主たる理由は、前掲の法律運用にある。離婚後、親権者を単独とする法制度下であっても、仮に、司法が離婚・別居事案につき親子の絆を基本的人権として正当に重視した法律運用を行っていれば、このような事態には立ち至っていないはずである。


 二、我が国の家事調停、審判、人事訴訟においては、子どもは単に親の権利の客体としか看做されておらず、その意向、権利が正当に尊重されることは少ない。又、家庭裁判所はその科学性の低さから、子の意思、心理状態を評価する力に欠けている。又、乙類審判事項でありながら、人事訴訟の付帯処分として為される親権者の指定、家事審判で為される親権者変更、監護者指定・変更にあたっては、旧態依然の安易な監護の継続性、母性優先に依拠した判断のみが優先され、子と別居を余儀なくされる親との関係の継続性が重視されないため、子の福祉が担保されているとは言い難い。以上の点を改善するためには、下級裁判所裁判官への社会学的視点、発達心理学的視点、その他隣接諸科学的視点からの啓発が不可欠である。


 三、従前、我が国司法においては、両親が別居する事案に際し、別居する親子の関係は制限しなければ子が安定性を欠くため子の福祉に適わないとされてきた。しかし、現在ではこのような学説・見解は否定され、先進諸外国では子の福祉の必要性から、離婚・未婚についても親権、事実上の監護を両親がそれぞれに行使する制度が採用されている。これに対立する法律運用に終始しているのは我が国だけであり、国際社会の中で孤立を深めるものである。又、離婚後、両親がそれぞれ別々に子の養育を担うことにつき、我が国風土に馴染まない、或いは日本では片方の親のみで子どもは十分に育つと考えられているという意見が見受けられるが、いずれも失当である。従来、我が国風土には子どものためには両親が揃っていることが大切であるという伝統的考え方が根付いていた。そのためかつて裁判所は、未成年子が存在する夫婦の離婚を認めることに消極的であった。ところが昭和六十年代以降、婚姻の事実上の破綻のみを理由として離婚を容認する、いわゆる破綻主義離婚の法理が導入されはじめ、裁判所は積極離婚主義へと転じた。破綻主義離婚には肯定すべき側面もあり、それ自体否定すべきものとは考えないが、未成年子の存在するとき、その運用は慎重であるべきと思料する。そもそも破綻主義離婚の導入にあたっては、子どもの福祉を担保するために、離婚後の共同親権あるいは共同監護等のセーフティーネットとしての法整備が不可欠である。ドイツでは、単独親権制度から共同親権制度へ移行する際の前提条件として、完全破綻主義離婚が導入されている。以上に鑑みれば、我が国司法は本来一体的導入が必要である外国法理を恣意的に取捨選択することにより、子の福祉を害する現状を招来せしめているとしか評価できない。


 四、親が我が子と生きる権利、子が親を求める権利は自然人として生まれながらに持つ基本的人権であることは、国際法理上確立された認定であり、このことと前項を総合すれば、別居する親が子の養育に資することは、子の最善の利益に適うという推定原則に従った法律運用が為されなければならないのは当然のことである


 五、我々が頭書において求めているのは、個別事案において相手方との対立から、子に会えなくなっている親を救済して戴きたいということではない。法律運用にあたって、瑣末な民法上の法理解釈に終始するのではなく、前記の大前提を基礎とし、それぞれの親と子の個人対個人の関係が正当に重視されることである。その為の礎となる具体的方策として、要請事項のとおり要請するものである。

 
以上につき考慮して戴くべく、頭書を提出致します。


提出団体
香川県高松市国分寺町新居 一般社団法人 親子の絆ガーディアン
北海道札幌市西区琴似 面接交流ネット

北海道札幌市白石区南郷通 コトオヤネットさっぽろ